名目賃金(めいもくちんぎん)とは、給与や賃金を金額そのままで見たものを指します。 「給料が前年より上がった」「月給が○円増えた」といった、 数字の増減を直接表すのが名目賃金です。 ニュースや統計で賃金の話題が出るときに、頻繁に使われる用語です。
名目賃金とは
名目賃金は、額面どおりの賃金を表す指標です。 給与明細や求人情報に書かれている金額に近い考え方で、 物価の変化やインフレの影響は考慮されていません。
統計やニュース記事では、「現金給与総額」「所定内給与」など、 集計の対象が明示されることもありますが、 基本的には「いくら支払われているか」を示す数字が名目賃金です。
名目賃金と実質賃金の違い
名目賃金とセットで語られることが多いのが実質賃金です。 実質賃金は、名目賃金を物価の変動で調整し、 実際にどれだけのモノやサービスを買えるかという 購買力の観点で見た賃金を指します。
なぜ「実質」という考え方が必要なのか
たとえば名目賃金が2%増えても、同じ期間に物価が3%上昇していれば、 実際に買える量は減ってしまいます。 このような場合、名目賃金はプラスでも、 実質賃金はマイナスになります。
そのため、生活の実感に近いのは実質賃金であり、 数字としての変化を示すのが名目賃金、という役割分担があります。
名目賃金が上がっても生活が苦しい理由
「賃上げされたはずなのに、生活が楽にならない」 と感じる背景には、物価上昇の影響があります。 食品やエネルギー価格、家賃などが上昇すると、 名目賃金の増加分が相殺されてしまうためです。
ニュースで「名目賃金は上昇したが、実質賃金は低下した」 といった表現が使われるのは、 このズレを説明するためです。
ニュースで名目賃金が注目される理由
名目賃金は、景気や雇用環境を判断する材料の一つとして使われます。 特に次のような場面で取り上げられることが多いです。
- 春闘やベースアップなど、賃上げの動向を伝えるとき
- 景気回復や企業収益の広がりを説明するとき
- 物価上昇との関係で、家計への影響を分析するとき
名目賃金の変化は分かりやすいため、 ニュースの見出しに使われやすい指標でもあります。
名目賃金の代表的な指標・統計
日本では、厚生労働省が公表する「毎月勤労統計調査」が 名目賃金の代表的なデータとして知られています。
この統計では、現金給与総額や所定内給与などが公表され、 名目賃金の増減を把握することができます。 記事によっては、どの項目を指しているのかを 確認することが重要です。
名目賃金を見るときの注意点
名目賃金を読む際には、次の点を意識すると誤解を防げます。
- 前年比か前月比か
- 賞与を含むかどうか
- 同時に物価がどう動いているか
名目賃金だけを見ると「上がった」「下がった」に目が行きがちですが、 実質賃金や物価の動きと合わせて確認することが大切です。
コラム|賃上げニュースを読むときのチェックポイント
賃上げに関するニュースを見るときは、 「名目賃金が何%上がったか」だけで判断しないことが重要です。 同じ記事内に、物価や実質賃金への言及があるかを確認すると、 ニュースの意味がより正確に理解できます。
数字の印象だけに引きずられず、 背景や条件をセットで読むことが、 経済ニュースを正しく読み解くコツです。
よくある質問
名目賃金と手取りは同じですか?
同じではありません。名目賃金は主に給与の額面を指し、 そこから税金や社会保険料が差し引かれたものが手取りです。 ニュースで使われる名目賃金は、個人の手取り額とは一致しない場合があります。
名目賃金が上がれば景気が良いと言えますか?
必ずしもそうとは限りません。 名目賃金の上昇はプラス要因ですが、 物価上昇の影響によって実質的な購買力が伸びていない場合もあります。 景気判断では、複数の指標を合わせて見る必要があります。
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